舟を編むをみて泣く
「舟を編む」のドラマをみると、ふいに泣いてしまう。
もう少しで泣きそうとか心の準備をする間もなく、涙腺がゆるむ。
辞書のイラストを描いている画家の話だった。
こだわりをもたず、いわれたとおりの絵を描き、修正に対応する。
辞書をつくるには長い時間が必要で、修正をお願いする間に、その画家は亡くなっていた。息子が同じ仕事をしていたので、修正を依頼する。
せっかく描いてもらった絵なのに、抵抗はないかとつい聞いてしまう編集者に、息子はこともなげにいう。父は生活のために描いていたので、こだわりはありませんでした。きっと父もはいはいといってなおしたでしょうと。
お線香をあげさせてもらうために部屋に入らせてもらう。遺影の写真は前をむいていなかった。
編集者は聞く。どうして前を向いていないのかと。
息子は父はずっといそがしくてまともな写真がなく、自分が生まれたときにだっこしているときの写真をトリミングしたのだと。その写真をみて、一緒にみていた娘と、ただただ泣いてしまった。
写真の赤ちゃんは天然パーマだった。大人になるにつれ、髪質がかわり、いまはストレートになっている息子だ。
こだわりのない父親にこだわりはあった。彼が辞書に描いたイラストの赤ちゃんはみな天然パーマだったのだ。イラストを検討していくときに「赤ちゃんみな天然パーマ」の案件があった。まぁ、バラバラの場所におかれる絵なので修正は必要ないという判断がおりる。
父親は赤ちゃんといえば、自分のひとり息子の赤ちゃん時代を描いていたのだ。
思い出すとまた泣けてしまう。
ったく。愛ってやつは。
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