日記

3連休。久しぶりに本も数冊読めて充実した時間を過ごせた。

『荒地の家族』は著者サインもいただき、早く読んでみたかった。

冒頭はサンプルでキンドルか何かで読んでいたのだが、通して読むのは今回がはじめてだった。震災を「海が膨張する」という表現にし、植木を生業としていうひとりの男性が震災を通じての生き方が描かれている。妻は子どもを産んでから、体調を崩しがちになり、ある日、高熱を出してそのまま亡くなってしまう。子どもを育てるのに必死で働いているうちに、子どもとの意思疎通も疎遠になっていく。再婚し、しばらくして子どもを授かるのだが、流産してしまい、そのことがきっかけで、だまって出て行ってしまい、いくら話をしようとしても、拒否されてしまう。

震災があってもなくても、最初の妻は亡くなり、その後の妻とも離れてしまうのは変わらないのかもしれない。

横たわる「海の膨張」、必死になって働くことによって、どんどん失なっていくのは、愛なのか、つながりなのか。

ひとつひとつの描写が彫刻のようであり、詩的でもある文章は印象に残る。

なにもない土地で、ひとつの小説を書き上げられたのはよかったと、著者は対談で話をしていた。

海が膨張してなにもかもなくしてしまった、その土地に、あらたに堤防もでき、人の営みは連綿と続いている。人は生き、死に、出会い、別れる。

働くということは、理不尽との闘いでもあり、下っ端でいるかぎり、負け続けるばかりだ。理不尽になぐられ、人権もなにもない。

それでも、得られるものもあるのだ。仕事で何も得られないことはない。